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得る方向と失う方向の矢印に囲まれた人物で、損失回避とGoogle検索広告のテーマを表した画像

結論|損失回避はGoogle広告の改善仮説に活用できる

損失回避は、Google広告の広告文やLPを改善するための仮説に活用できます。ただし、損失を強調すればクリック率や問い合わせ率が上がる、という法則ではありません。

大切なのは、検索した人が「何を失いたくないと思っているのか」を考えることです。広告費だけでなく、依頼先を変える手間や、今の成果を失う不安が判断に関わる可能性もあります。

この記事では、損失回避の研究とその限界を確認したうえで、広告文の作り方、LPとのつなぎ方、有効な問い合わせまで見る検証方法を解説します。行動経済学と広告の全体像は、行動経済学はGoogleリスティング広告に活用できるのか?をご覧ください。

損失回避とは?

損失回避とは、ある基準から同程度の利得と損失を比べたときに、損失の方を重く評価する傾向です。ここでいう基準は「参照点」と呼ばれます。単に「損をしたくない」という気持ち全般を指す言葉ではありません。[1]

たとえば、今の所持金を基準にして1万円を得る場合と、1万円を失う場合を考えます。金額の変化は同じでも、失う側をより重く評価するなら、損失回避に沿った反応と考えられます。これは概念を説明する例で、すべての人が同じ反応をするという意味ではありません。

広告では「何を基準にした損失か」を考える

広告費を減らしたい人もいれば、予算を維持して問い合わせを増やしたい人もいます。後者にとっては、単なる支出削減よりも「現在の問い合わせを失わずに改善できるか」が重要かもしれません。こうした違いは、検索語句や相談内容から確かめる仮説です。

広告費を払うこと自体を、すべて心理的な損失と決めつけることもできません。必要な集客投資として受け止めている人もいるためです。無駄な支出を避ける合理的な判断と、同額の利得より損失を重く評価することは区別します。

プロスペクト理論と損失回避

プロスペクト理論は、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンと、心理学者アモス・トベルスキーの共同研究として、1979年に発表されました。受賞は2002年です。[1][2]

この理論では、最終的な資産額だけでなく、参照点からの利得・損失によって結果を評価することや、確率をそのままの比率では重み付けしないことなどを扱います。損失回避は、その一部です。「不確実な選択を避けること」と同じ意味でもありません。[1]

Google広告への接続で重要なのは、利用者が何を基準に、どの変化を不利益と捉えるかです。ただし、広告をクリックしなかった理由を、データもなく損失回避と断定することはできません。料金、サービスとの適合性、情報不足なども確認する必要があります。

「損失は利益の2倍」は本当に正しいのか?

「誰でも、どんな場面でも、損失を利益の2倍強く感じる」とは言えません。よく引用される数字の一つに、トベルスキーとカーネマンの1992年の研究で報告された、損失回避係数の中央値2.25があります。これは大学院生25人の金銭的な選択データにモデルを当てはめた推定値です。[3]

係数は、モデルの中で利得に対して損失をどの程度重く評価するかを表します。感情の強さを直接測った倍率でも、広告のCTRやCVRが何倍になるかを示す数字でもありません。

後続研究には支持する結果と、条件依存性を示す結果がある

研究主な結果読み取る際の注意
ブラウンら(2024年)[4]150論文・607の推定値を統合。平均の損失回避係数は1.955。1992〜2017年に報告された研究が対象。広告成果の倍率ではない。
ワラセクら(2024年)[5]リスクを伴う選択のデータを再推定し、統合値1.31を報告。利用できるデータや推定精度に制約があり、対象と方法も異なる。
イェヒアム・ザイフ(2025年)[6]利得・損失の金額範囲が対称で、金額順に並べない条件では、係数は約1.07で1を有意に上回らなかった。先行メタ分析の再分析。損失が小さい条件や金額順の提示では、強い損失回避が再び確認された。

※ 対象データと分析方法が異なるため、数字を同じ条件の比較として並べたものではありません。

研究をまとめると、損失回避を支持する知見はある一方、強さや再現される条件には議論があります。2025年の結果も、あらゆる場面で損失回避が存在しないことを証明したものではありません。広告実務では「2倍」を成果予測に使わず、自社の顧客と配信条件で確かめるのが適切です。

損失回避とフレーミング効果の違い

損失回避は「利得と損失をどう評価するか」に着目します。フレーミング効果は「実質的に同じ情報でも、提示の仕方で判断が変わること」に着目します。関連はありますが、同じ概念ではありません。[1][7]

「期限内なら割引」と「期限後は割引対象外」は、同じ条件の見せ方を変える例です。しかし、後者の反応が良かっただけでは、損失回避が原因とまでは言えません。期限の分かりやすさや注意の向き方も変わるからです。

利得・損失フレームの詳しい比較は、フレーミング効果はGoogleリスティング広告に活用できるのか?で解説しています。この記事では、検索者が避けたい不利益と、相談をためらう理由を考えることに重点を置きます。

Google広告の広告文ではどう応用できる?

最初に「何を失うかもしれないのか」「その不利益を確認・改善できるサービスなのか」を整理します。損失を大きく見せるのではなく、提供できる支援を具体的な広告文にします。

以下は研究から着想を得た検証用の例です。成果が出た事例ではなく、損失回避そのものを証明する実験でもありません。実際に提供できる内容に限って使用します。

確認したい課題広告見出しの候補仮説と注意点
広告予算の使い方A:広告予算をより有効に活用
B:ムダな広告費を見直す
価値の向上と支出の無駄では焦点が異なる。完全に同じ意味の言い換えではない。
対象外の検索からの流入A:検索語句を点検
B:対象外の検索を見直す
Bは問題の範囲も具体化している。反応差を損失回避だけに帰属させない。
依頼先変更へのためらい変更前に対応範囲を確認切り替える際の不利益への懸念を想定した案。LPで引き継ぎ範囲や条件を説明する。

たとえば1行目なら、見出しを比較し、説明文は「検索語句・広告文・LPを確認。問い合わせにつながらない原因を整理します。」でそろえる案が考えられます。料金や対応範囲も両案で同じ条件にします。

損失への懸念は、申し込まない理由にもなり得る

「今の広告費を無駄にしたくない」と思う一方で、「依頼先を変えて今の問い合わせまで減ったら困る」と考える人もいるかもしれません。そこで、現状の課題を確認してから変更範囲を決める流れを示す、という応用仮説も立てられます。

ただし、切り替えへのためらいには、実際の移行費用や作業負担などの合理的な理由もあります。すべてを損失回避で説明せず、何が不明で判断できないのかを確認します。

検索意図を無視して損失を強調してはいけない

「Google広告 運用代行 費用」と検索する人には、費用と支援範囲が重要な判断材料になります。「広告費を無駄にしないで」と伝えるだけでは、知りたいことに答えられません。

「Google広告 問い合わせ 来ない」なら、検索語句、広告文、LP、計測のどこに原因があるかを確認できることを伝える案が考えられます。一方、「Google広告 自分で 設定」の検索者には、運用代行への相談より設定方法の情報が求められている可能性があります。

まず実際の検索語句と問い合わせ内容を照合し、サービスを探している人と情報収集段階の人を整理します。クリックがない、あるいは問い合わせがないという理由だけで、言葉を強くするのは避けましょう。

LPと広告文をどうつなげる?

広告で「ムダな広告費を見直す」と伝えたら、LPでは何を確認し、どこまで支援するのかを説明します。不利益への懸念を入口にした場合ほど、読者が冷静に比較できる材料を用意することが大切です。

  • 確認する内容:検索語句、配信地域、広告文、LP、コンバージョン計測など。
  • 料金表示:広告媒体に払う費用と運用代行費、初期費用、追加費用、契約期間を分ける。
  • 比較材料:対応範囲、改善の進め方、実績の条件、変更時の引き継ぎ範囲を示す。
  • 問い合わせフォーム:相談に必要な項目に絞り、問い合わせ後の手順や費用の発生条件を明示する。

「相談だけでも料金がかかるのか」「問い合わせたら契約になるのか」といった疑問には、実際の運用に沿って答えます。存在しない無料対応や成果保証を加えるのではなく、判断に必要な情報を補います。

損失回避の仮説をGoogle広告でどう検証する?

検証するのは「損失回避を使ったか」ではなく、「問い合わせにつながったか、その問い合わせが顧客候補だったか」です。研究の理論から、配信する広告案、事業の成果までを分けて考えます。

検索意図を起点に広告文AとBを分岐して比較し、共通のLPとフォームを経て、有効問い合わせで評価する検証設計
広告文だけを比較する場合の概念図。広告の分岐と、共通にする条件、最終的に評価する成果を分けています。

1.対象と仮説、判定基準を先に決める

例として、運用代行を検討中の検索者に対し、「予算の有効活用」より「無駄な広告費の見直し」を伝える方が、有効な問い合わせにつながるかを検証します。有効問い合わせは、対象地域・依頼内容・対応可能な条件に合う相談など、自社の基準で定義します。成約済みという意味ではありません。

主要指標を有効問い合わせの獲得単価とし、件数も併せて確認する、といった判定方法を事前に決めます。獲得単価だけが下がっても、必要な問い合わせ件数を確保できない場合は、事業として十分かを検討します。

2.レスポンシブ検索広告の組み合わせを整理する

レスポンシブ検索広告では、見出しや説明文が異なる組み合わせで表示されます。同じ広告にA・B両方の見出しを入れて、個別の表示実績だけを比べても、条件をそろえた比較実験と同じには扱えません。[8]

Google広告の「広告バリエーション」では、広告文の変更をテストできます。対象範囲、変更する表現、配信割合、期間を設定し、A・B以外の見出しや説明文との組み合わせも確認します。[9]

広告文だけを比較するなら、LP、料金、配信地域、入札方針などをできる限りそろえます。Aの期間とBの期間を単純に入れ替えるだけでは、季節や競合の変化も混ざります。LPも変更する場合は、広告とLPを組み合わせた施策として評価します。

3.送信完了と有効問い合わせを区別して計測する

フォームのボタンクリックを、送信完了と同じ成果にしないようにします。テスト送信などで重複・計測漏れを点検し、電話は電話リンクのクリックと実際の相談を区別します。

そのうえで、問い合わせ後に対象外・営業連絡・重複などを分け、有効だった相談を記録します。A・Bのどちらから来た問い合わせかを照合できる計測設計も必要です。これができなければ、有効問い合わせ単位で広告案を比較できません。

Google広告にも、問い合わせ後の評価を反映する「有望な見込み顧客」などのコンバージョン目標があります。オフラインの評価を取り込む場合は、自社の有効判定と計測設定を対応させます。[10]

4.CTRの改善と、事業の成果を分けて読む

次は考え方を説明するための架空の集計です。両案の広告表示回数を2万回、広告費を5万円とします。実績や予測値ではありません。

指標広告A広告B
クリック数1,000回1,250回
CTR5.0%6.25%
問い合わせ数10件15件
有効問い合わせ数6件5件
有効問い合わせの獲得単価約8,333円10,000円

広告BはCTRも問い合わせ数も上ですが、有効な相談は少なく、その獲得単価も高くなっています。有効問い合わせの獲得単価=広告費÷有効問い合わせ数です。0件の場合は算出できないため、0円とは扱いません。

ただし、この少数の件数だけでAが優れていると確定することもできません。問い合わせまでの時間差、配信量、検索語句の偏り、結果の不確実性を確認します。

通常の問い合わせ率と検出したい改善幅を踏まえ、実施期間・予算上限・終了条件を事前に決めます。短期の上下で勝者を選ばず、十分な件数が集まらなければ「判断保留」とします。損失寄りの広告が良かった場合も、結論はその配信条件での訴求の評価にとどめます。

不安をあおる広告との違い

Googleは、死・事故・病気・破産などの否定的な出来事を取り上げ、恐怖や罪悪感などの強い負の感情をあおって即時の行動を促す広告を禁止しています。また、不実表示のポリシーでは、誤解を招く情報や利用できない特典なども禁止しています。[11][12]

「このままでは必ず経営が悪化する」「今日申し込まないと大損する」と根拠なく迫るのではなく、「対象外の検索に広告費が使われていないか確認する」と、確認できる課題と支援内容を伝えます。

架空の期限、実在しない割引、過度な緊急性は使いません。実際の期限や条件がある場合も、その内容を正確に示します。損失に触れた広告がすべて禁止という意味ではありませんが、広告文とLPを含めてポリシーに沿っているか確認が必要です。

よくある質問

「損をしたくない」と思うことは、すべて損失回避ですか?

いいえ。損失回避では、ある基準から同程度の利得と損失を比べたときの評価の非対称性を考えます。不要な出費を避けることや、実際の移行費用を懸念することだけでは、損失回避と判断できません。

損失を強調すると広告の反応は上がりますか?

一律には言えません。検索者の目的やサービス、表現、LPによって結果は変わり得ます。クリックが増えても顧客候補につながらなければ、事業としての改善とは限りません。

少額予算でも検証できますか?

取り組めますが、有効問い合わせが少ない場合は優劣を判断しにくくなります。多数の案へ分散させず、一つの仮説に絞り、先に計測や対象外の検索流入を点検します。予算内で必要な件数が集まらなければ、勝ち負けを断定しません。

広告文とLPは同時に変えた方がよいですか?

広告文の差を知りたいなら、LPなどの条件をそろえます。ただし、現状の広告とLPに明らかな不一致がある場合は、先に整合性を直す方が適切です。同時に変えた場合は、広告文だけの効果として報告しません。

まとめ

損失回避は、検索者が何を基準に不利益を感じ、何を失いたくないと考えるのかを整理する視点になります。一方、研究で報告された係数を広告の改善率に置き換えたり、損失を強調すれば成果が上がると考えたりすることはできません。

検索意図に合う仮説を作り、広告文とLPに必要な情報をそろえ、実際の問い合わせ内容まで確認する。その積み重ねが、Google広告の改善につながります。

Google広告とLPをまとめて見直したい方へ

広告文を変えても問い合わせが増えない、相談は来るけれど対象外が多い、LPのどこを直すべきか分からない。そのような場合は、検索語句から広告文、LP、料金や比較材料、フォーム、コンバージョン計測までをつなげて確認する必要があります。

MOTONAGAでは、Google検索広告の運用とLP制作・改善をまとめて扱っています。「損失を強調する広告に変えるべきか」と決める前に、現在の配信と問い合わせ内容から、見直すべき点を一緒に整理します。

ご相談の際は、分かる範囲で、現在の広告配信状況、LPのURL、お困りのことをお知らせください。 Google広告・LP改善についてMOTONAGAに相談する

参考文献・出典

論文名は内容が分かる日本語訳を添えています。研究結果と広告への応用仮説は区別して記載しました。ウェブ情報の確認日:2026年9月12日。

  1. ダニエル・カーネマン、アモス・トベルスキー(1979)。「プロスペクト理論:リスク下における意思決定の分析」。『エコノメトリカ』47巻2号、263〜291頁。原著論文。DOI:10.2307/1914185。
  2. ノーベル賞公式サイト。「ダニエル・カーネマン:2002年経済学賞」。受賞年・受賞理由の確認。
  3. アモス・トベルスキー、ダニエル・カーネマン(1992)。「プロスペクト理論の発展:不確実性の累積的表現」。『リスクと不確実性のジャーナル』5巻、297〜323頁。原著論文。DOI:10.1007/BF00122574。
  4. アレクサンダー・ブラウン、今井泰佑、フェルディナンド・ヴィーダー、コリン・キャメラー(2024)。「損失回避の実証的推定値に関するメタ分析」。『経済文献ジャーナル』62巻2号、485〜516頁。DOI:10.1257/jel.20221698。
  5. ウカシュ・ワラセク、ティモシー・マレット、ニール・スチュワート(2024)。「リスクを伴う状況における損失回避のメタ分析」。『経済心理学ジャーナル』103巻、論文番号102740。DOI:10.1016/j.joep.2024.102740。
  6. エルダッド・イェヒアム、ダナ・ザイフ(2025)。「損失回避は頑健ではない:メタ分析の再分析」。『経済心理学ジャーナル』107巻、論文番号102801。DOI:10.1016/j.joep.2025.102801。
  7. アモス・トベルスキー、ダニエル・カーネマン(1981)。「意思決定のフレーミングと選択の心理」。『サイエンス』211巻4481号、453〜458頁。原著論文。DOI:10.1126/science.7455683。
  8. Google広告ヘルプ。「レスポンシブ検索広告について」
  9. Google広告ヘルプ。「広告バリエーションについて」
  10. Google広告ヘルプ。「有望な見込み顧客とコンバージョンに至った見込み顧客について」
  11. Google広告ポリシーヘルプ。「不実表示:クリックベイト広告」
  12. Google広告ポリシーヘルプ。「不実表示」